『ライヴ・アット・ノーウェア1987-1989』は、デビュー・アルバムリリース以前のライヴ音源を集めたもので、17曲中10曲が未発表曲。残り7曲中、前述の「ヘヴンサッカー」以外の6曲は、『ザ・ゴールデン・エイジ・オブ・ヘヴィ・ブラッド』に収録されることになる楽曲だ(ただし、今回本作と同時に再発されるデビュー・アルバムのCD版にはボーナス・トラックとして「ヘヴンサッカー」と「ヘッドスピニングディジーブルース」がともに収録されていた)。
録音された期間は、87年5月10日(京都CBGB)から89年2月26日(エッグプラント)まで。よって、ベイシストは、途中でキクコからアオヤギへと交替している。なんと、すべての音源が客席でカセット・ウォークマンによって録音されたものらしいが、驚くほどクリアな音質になっているのは、マスタリング技術の賜物なのか、ウォークマンの優秀さゆえなのか。
全17曲。とことんヘヴィ。ちょっと箸休め、みたいな曲はひとつもない。終始ファズの嵐が吹き荒れるギター、黒々とした野太いベイス、微妙な横揺れでアンサンブルを前へ前へと駆り立てるテクニカルなドラム、そして発狂したようなヴォーカル。地獄のような、いや地獄そのもののサウンドだ。情け容赦ないというか、逃げ場がないというか。
いずれの演奏もとことん重いのだが、加速感がある。メンバー4人のそれぞれが他のプレイヤーのケツを蹴り飛ばして煽るような、そんな乱暴な加速感が。ディストーションやファズを駆使したノイジー&ヘヴィなネオ・サイケ・ロック、たとえば当時欧米ロック好きの間で注目されつつあったマイ・ブラッディ・ヴァレンタインなどとは、質的にまったく異なるノイズであり、重さであり、加速感だ。そして、それらが一体となって醸し出される得体の知れない熱こそが、まさに、関西の“粋”なのだと思う。